プライバシーポリシーを自社で作成するのは手間がかかるものです。
特に、個人情報に関して専門の知識を有する法務部員ではない者が作成する場合、本来の業務ではないものとなるため、その知識や経験が不足してる状況という場合が多いのではないでしょうか。
そのため、できることなら、ネット上で公開されているテンプレートを使って、手早く済ませたいと思うのは自然なことです。
しかし、テンプレートをそのまま使うことには、思わぬリスクが潜んでいることをご存じでしょうか。
サービス内容に合っていない記載、最新の法改正に対応できていない文章、さらには信頼を損なう表現のまま公開してしまう可能性もあります。
「とりあえずそれっぽいものを載せれば安心」と考えていると、後から思わぬトラブルに発展することもあるのです。
この記事では、テンプレートを利用して作成した際に起こりがちな失敗例を紹介し、どうすれば実態に即した適切なプライバシーポリシーを整備できるのかを紹介します。
事例1:サービス内容に合っていないまま掲載してしまう
テンプレートの多くは、汎用的な構成になっています。つまり「どんな事業者にもおおよそ当てはまりそうな内容」だけが含まれており、あなたのサービス固有の特徴やデータの取り扱い方には対応していないのが普通です。
例えば、
- 特定の分析ツール(Googleアナリティクスなど)を使っているのに、その記載がない
- サービス利用者から写真や文章を取得するサービスなのに、個人情報の種類にそれが入っていない
といったケースでは、利用者に誤解を与えるおそれがあります。
事例2:法改正に対応していない古いものを使ってしまう
令和2年(2022年)4月に改正された個人情報保護法では、開示請求への対応や第三者提供記録の開示などに関して改正が行われました。
しかし、テンプレートの中には古い法令に基づいたまま更新されていないものも多く、そのまま掲載すると現行法に即していない記載になってしまうおそれがあります。
法的義務の有無にかかわらず、情報の取り扱いに関するポリシーが不正確または古いままになっていると、お客様からの信頼を損なう原因になります。
事例3: そもそもテンプレートが不正確・不十分なものだった
個人情報保護に関する専門家が作成したテンプレートであればそのリスクは低いですが、中には専門知識を持っているかどうか不明な者が作成したテンプレートもあります。
このようなテンプレートは最低限の項目しか記載されていないことも多く、本来記載すべき重要な情報が抜けてしまうリスクがあります。
たとえば、
- 第三者への再委託先(クラウドサービス提供会社など)についての明示
- 海外移転が発生する場合の利用者への通知
- クッキー(Cookie)等を使った行動履歴データ取得についての具体的な説明
などは、テンプレートによっては触れられていないこともあります。
実際にはこれらの情報が非常に重要視される時代になっており、説明が不十分だと利用者からの信用を損ない、場合によっては行政指導の対象になる可能性もあります。
テンプレートを使う場合でも、「自社の情報収集・利用方法に応じて不足している点はないか」を十分に検討する必要があるのです。
事例4:外部サービスとの整合性が取れていない
プライバシーポリシーには、外部サービスの規約で要求される記載が必要になることがあります。
例えばGoogleアナリティクスを利用する場合には、利用していることを明示することが求められています。テンプレートによってはこうした記載が省略されていることもあり、外部サービスの利用規約違反につながる可能性もあるのです。
事例5:他の規約や表示との整合性が取れていない
利用規約・特定商取引法に基づく表示・キャンセルポリシーなど、さまざまな法的文書を用意している場合、それぞれの整合性を取ることが重要です。
例えば、利用規約では「ユーザーの情報は一定期間で削除する」と規定しているにもかかわらず、プライバシーポリシーでは「削除の予定はない」と表明しているなど、内容が矛盾していることもあります。
矛盾する文書は、事業者としての信頼性を低下させ、法的トラブルの火種になることもあります。
テンプレはあくまで“型”、中身はサービスに合わせて
無料テンプレートはあくまで「たたき台」にすぎません。
事業内容、個人情報の種類、取得方法、外部サービスとの連携など、それぞれの実態に応じた内容を明確に記載することが重要です。
「なんとなくそれっぽいものを載せておけばいい」と思っていた方も、ここまで読んでいただければ、実はプライバシーポリシーが信頼構築の大きな要素であることをご理解いただけたのではないでしょうか。
当事務所では、事業者様ごとの業態や運営方針を丁寧にヒアリングし、それに即したプライバシーポリシーの作成を行っています。
「そろそろきちんと整備したい」とお考えの方は、お気軽にご相談ください。